いじめ総合対策【第3次】下巻_2025_2版
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人権教育に関する実践・指導事例Ⅱ第3部第3部いじめをしない、させない、許さないための意識の醸成互いの個性の理解規範意識の醸成保護者プログラム望ましい人間関係の構築いじめ問題への対応事例教員研修プログラム地域プログラムいじめをしない、させない、許さないための意識の醸成 小学校中学校高等学校特別支援学校1,951 人1,471 人591 人68 人37.524.220.520.430.920%40%60%35.72.662.11.464.01.333.84.480%100%16.014.330.90%児童・生徒夕べからの雨が降り続いている。「今日も雨か。」2929誰かに相談した何もしなかった「人権教育プログラム(学校教育編)」(平成 16 年 3 月) より作成無回答37(9) 本時に用いた教材〔教材1〕いじめを見たり、聞いたりしたとき、どうしましたか〔教材2〕「傍観者でいいのか」(1) 自己存在感の感受 いじめの状況があったらどうしたらよいか、どうしたらいじめがなくなるか考えたことを友達に伝え、その考えが認められるようにする。(2) 共感的な人間関係の育成 人は一人一人違うことや、自分と異なる思いや考えを大切にし、互いに理解しようとする。(3) 自己決定の場の提供 いじめの状況があったらどうしたらよいか、どうしたらいじめがなくなるかを考え、伝える場面を設定する。(4) 安全・安心な風土の醸成 一人一人が考えたことを大切にしながら話合いを進めるよう確認し、生徒が安心して学習に取り組むことができるようにする。教材文生徒指導の実践上の視点小学校中学校高等学校特別支援学校注意した「いじめ問題に関する研究報告書」(平成 26 年 2 月) 東京都教職員研修センター より作成 昨日、帰るときAさんの上着がぬれて泥だらけになっていたことを思い出した。 「遅れるわよ。急ぎなさい。」と母の声が聞こえた。私は、重たいかばんを引きずるようにして家を出た。学校へは行きたくなかった。学級が嫌だった。 2年生になって学級替えがあった。私はみんなに推薦されて学級代表になった。にぎやかな学級だなあと思っていた。そして、みんなのためにできることをやろうと思った。 初めて一緒の学級になった人の中にAさんがいた。気が弱く、ちょっと頼りなさそうなところがあったが、冗談を言って周りを笑わせる。何を言われてもニヤニヤ笑っていた。AさんはBさんやそのグループの仲間といつも一緒だった。毎朝Bさんの家に迎えに行き、Bさんの荷物をもって登校していた。私は、(断ればいいのに…)と思っていた。 ある日、Aさんは朝寝坊をしたらしく、Bさんの家に寄らずにあわてて登校することがあった。登校すると、AさんはBさんに呼ばれた。戻ってきたAさんは下を向いて苦しげだったが、すぐに冗談を言っていつものようにおどけていた。それからは、Aさんは今までにもましてBさんたちの言いなりになった。学級のみんなの前でもBさんは平気でAさんをからかったり、命令したりするようになっていた。学級の人の中にはBさんたちと一緒にAさんをからかって笑う人まで出てきた。でも、ほとんどの人は、何も言わなかったし、何もしなかった。 Bさんは、「Aが遊ぼうっていうから一緒に遊んでやっているだけだし、Aだって笑っているじゃないか。」と声高にみんなに話していた。 私は、(Aさん、なんで笑っているの。怒ればいいのに…。)と思った。 学期の終わりころになると、Aさんは身体の不調を訴え、早退したり欠席したりすることが多くなった。 放課後、私は、掲示板を直していた。その時、思い詰めたような顔をしたCさんに話し掛けられた。 「Aさんを、これ以上ほうっておけない。」 私は、はっとした。 Cさんは、休んでいるAさんの家に行って話を聞いたそうだ。Aさんはボロボロと涙を流して、「いじめられるのはつらい。もう学校へは行かない。」と言ったそうだ。Bさんたちから言われたことを断ると、殴られたりしていたそうだ。 やっぱりつらかったんだ。苦しかったんだと思った。 早速、Cさんと一緒に先生に相談に行った。次の日に、学級の代表者で話合いを開くことになった。放課後の話合いは長時間に及ぶ真剣な会になった。 「この学級からいじめをなくそう。見て見ぬふりはひきょうだ。」 長時間の話合いの結論であった。

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