75◆ 法に規定された「いじめの定義」は広範囲なものに修正されてきました 過去の「いじめ」の定義は、「一方的に」、「継続的に」、「深刻な」などの要素が含まれており、いわゆる社会通念上のいじめに近いものとなっていました。しかし、いじめ防止対策推進法に規定する「いじめ」の定義では、いじめに該当する行為の範囲は極めて広く、その行為を受けた児童・生徒が、心身の苦痛を感じた場合は、「いじめ」に該当するとされています。「学校いじめ対策委員会」がいじめを認知するに当たっては、一人一人の児童・生徒の状況から、「この子供は苦痛に感じているのではないか。」という視点に立って判断することが必要です。昭和 61 年度平成6年度平成 18 年度平成 25 年度「いじめ」の定義(文部省・文部科学省による)の変遷第4部いじめをしない、させない、許さないための意識の醸成互いの個性の理解規範意識の醸成保護者プログラム望ましい人間関係の構築いじめ問題への対応事例教員研修プログラム地域プログラム教員研修プログラム【いじめ防止対策推進法案に対する附帯決議(抜粋)】(平成 25 年6月 19 日 衆議院文部科学委員会、同6月 20 日 参議院文教科学委員会)いじめには、多様な態様があることに鑑み、本法の対象となるいじめに該当するか否かを判断するに当たり、「心身の苦痛を感じているもの」との要件が限定して解釈されることのないよう努めること。 「冷やかしやからかい、悪口や脅し文句、嫌なことを言われる」に関しては、教師による「認知」と、児童・生徒が「経験」したと回答した割合がほとんど同じ値である。しかし、「軽くぶつかられたり、遊ぶふりをしてたたかれたり、蹴られたりする」、「仲間はずれ、集団による無視をされる」については、教師が「認知」した回答が低く、第三者の目には見えづらい行為であることから、「認知」のための観察が課題となっています。1 自分よりも弱い者に対して一方的に2 身体的・心理的な攻撃を継続的に加え3 相手が深刻な苦痛を感じているもの4 学校としてその事実(関係児童生徒、いじめの内容等)を確認しているもの(参考:国立教育政策研究所「いじめ追跡調査 2019 - 2022」令和6年 12 月)4 個々の行為がいじめに当たるか否かの判断を表面的・形式的に行うことなく、いじめられた児童生徒の立場に立って行うなお、起こった場所は学校の内外を問わないこととする。1 一定の人間関係のある者から2 心理的、物理的な攻撃を受けたことにより3 精神的な苦痛を感じているもの参照:いじめ総合対策【第3次】上巻 47 ページ1 一定の人的関係のある他の児童等が行う2 心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)3 心身の苦痛を感じているもの研修に当たっての確認事項いじめに対する認識の共有◆ 教職員一人一人の受け止めに左右された「いじめ」 文部科学省の調査によると、平成 27 年度末には全ての学校が、「学校いじめ防止基本方針」を策定し、「学校いじめ対策委員会」を設置しました。しかしながら、このような取組にもかかわらず、「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」におけるいじめの認知件数は、都道府県間や学校間における差が大きいままです。その背景の一つとして、児童・生徒の同じ言動を目にしても、ある教職員は「いじめである。」と受け止めるのに対し、他の教職員は「いじめではない。」と受け止める認識のずれがあると考えられます。 いじめはどの学校どの子供にも起こり得る、との認識に立ち、いじめかどうかの受け止めを教職員間で統一することが必要です。いじめ問題を見落とさないためには、教職員一人一人が「いじめ」の定義を正しく理解することが重要です。
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