97 生徒 A は、ユーモアがあり行動力もあることから学級内でも一目置かれる立場である。生徒A といつも一緒に行動するグループ内では、時々生徒 A が強い語調で生徒 B と生徒 C に接したり指示を出したりする姿が見られることもあったが、問題があるようには見えなかった。 ある日、生徒 B と生徒 C から、「生徒 A が自己中心的で困っている。」という相談を受けた。担任は生徒 A のグループでの関係を注意して見るようになり、自己中心的な発言が見られたときには、その場で指導した。その後、生徒 B と生徒 C からは、「関係が良くなった。」との報告があり、担任は安心していた。 しかし数日後、生徒 B と生徒 C が中心となり、生徒 A が発言するとほかの生徒と目くばせをしたり、生徒 A の背後から不自然なせき払いをしたりするなどの様子が見られた。担任は生徒 B と生徒 C に話を聞くと、「今までやられたことをやり返しているから悪くない。」と答えた。 1か月ほど経ち、生徒 A がたびたび遅刻するようになった。保護者に電話をしても、「自分も今起きたばかりで、生徒 A は家にいないので、朝いつものように家を出たと思う。」との回答だった。ある朝、保護者に連絡がつかなかったため、教職員が分担して生徒 A を探したところ、公園で泣いている生徒 A を発見した。生徒 A は泣きじゃくりながら、「生徒 B と生徒C から金銭を要求された。家の人に相談しても聞いてもらえない。」と話した。第4部いじめをしない、させない、許さないための意識の醸成互いの個性の理解規範意識の醸成保護者プログラム望ましい人間関係の構築いじめ問題への対応事例教員研修プログラム地域プログラム教員研修プログラムいじめる側といじめられる側が逆転した事例〈事例の概要〉 □ 取組の経過□ 事例からの学び
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